・失敗しない住宅リフォームのコツ
・悪質業者から身を守る方法
・間違いだらけのリフォーム業者選び
・知っておきたいバリアフリー改修
1.誰に相談すれば良いの?
国土交通省や住宅関連の民間会社が実施したリフォームに関するアンケートの調査結果を見てみると、リフォーム計画を立てるとき一番困ったことを聞いた質問で最も多いのは、「どの業者に相談すれば良いのか分からない」となっています。
そこには、リフォームするのは良いけれど、いざ何から始めていくのか、誰に相談すれば良いのかが分からず困っている姿が浮かび上がってきます。
お客様様は、業者を選ぶ際の基準も方法も分からないまま、折込チラシや電話帳を見て見積りを依頼し、値段だけを比較して安い業者に仕事を任せています。また、訪問販売の営業担当者のペースにうまく乗せられ、いつのまのか契約し仕事を依頼しています。
これでは、社会問題となっている欠陥リフォームや悪質リフォームの被害に遭っても不思議ではありません。
満足の行くリフォームのカギは、良い業者を見つけることができるかどうかにかかっています。信頼できる業者を選ぶことの大切さは、誰もが理解しているのですが、どうすれば間違いのない業者を選ぶことができるかは誰も教えてくれません。
答えをさがすために、リフォーム関連の書籍や雑誌の情報を調べても、新聞やテレビで紹介されている専門家の意見を聞いても、どこをさがしても「見積りは、数社から取って下さい」といった当たりさわりのない内容です。ところが、いつのまにかその内容が「業者選びの常識」として一人歩きをしています。
しかし、そこには実際に選ぶ側の立場になって考える視点が抜け落ちていますから、首をかしげてしまうようなこと、「そんなこと本当にできるの」と疑問に感じることが並んでいます。
そんなあたかも真実として語られている「業者選びの常識」がいかに間違っているか、非現実的なものであるかひとつひとつ見ていきます。
2.業者選びの常識5つの間違い その① 大手の会社に任せれば大丈夫
寄らば大樹の陰ではありませんが、「大きな会社であればしっかりやってくれそう」、「間違いはないだろう」と勝手に思い込んでしまいがちです。でも、それは広告を通じたイメージや根拠のない期待からくるもので、必ずしも正しいとは限りません。
大手だからといって、間違いのない工事をしてくれる保証はどこにもないのです。試しにインターネットで「欠陥住宅」を検索してみて下さい。大手のハウスメーカーが並んでいることがわかります。大手のメーカーは広告力や営業力によって、数多くの工事を取り扱っているということでもあります。
ただ、大手の会社に仕事を依頼しても、工事を直接担当するのは地元の下請け会社です。つまり、大手の会社は自社で工事をすることはないわけですから、大手の会社に任せれば大丈夫という根拠はそもそも最初からありません。
3. 業者選びの常識5つの間違い その② 見積書は数社から取って比較せよ
「見積書は最低でも数社から取って、比較検討したうえで決定しましょう」
これはどんな書籍や雑誌にも必ずと言っていいほど書かれています。また、建築のプロである建築士などの専門家も口を揃えて同じことを言っています。
でも、ちょっと考えてみて下さい。おかしいことに気付きませんか。すでにみてきたように、リフォームを検討している人の多くが、「どの業者に見積りを依頼したら良いのか分からない」と悩んでいるのです。
依頼すべき業者が分らないという悩みをまったく無視して、どこでも良いからとりあえず数だけは必要ですよと言っているようなものですから、的外れもよいところです。
確かに、相見積りであることを前もって業者に知らせておけば、競争原理が働いて見積り金額を下げる効果が期待できます。でもその効果が本当に期待できるのは、見積りを依頼する業者がいずれも信頼できる間違いのない業者の場合に限られます。
ですから、信頼できる業者であるかどうかを見分ける判断基準とその具体的な方法が大変重要となってくるのです。その方法については、あとで詳しく紹介します。
4. 業者選びの常識5つの間違い その③ 会社を訪問して近所の評判を聞けば分る
「会社を訪問して雰囲気を確認してみましょう。
対応がしっかりしている会社が安心です」
「近所での評判を聞いて、評判が良ければ大丈夫です」
いかにももっともらしく聞こえますが、本当にお客様のことを考えてのアドバイスとは思えません。業者選びを検討している人のうち、いったいどれほどの方がそういった直接行動を取れるでしょうか。
ほとんどの方ができないのではないでしょうか。「いや、私にはできる」という方もなかにはいるかもしれません。しかし、一般の方ができないようなことをすすめても何の意味もありません。
多くの方は、電話帳を開いて業者に問合せの電話をするのでさえ慎重になってしまうものです。ましてや自分から業者の事務所に出掛けて行って雰囲気や対応を確認して下さいとは、これほど無責任で非現実的なアドバイスはありません。
それでも勇気を振り絞って行く方がいるとしたら、業者はさぞかし喜んでくれるでしょう。何の苦労もなしに、お客様が勝手に一人で飛び込んで来てくれるわけですから。
近所の評判についても同じことが言えます。あなたは、リフォーム業者の事務所や倉庫、資材置場の現状をご存知でしょうか。事務所には、その業者の社員だけでなくほかの建築業者や納入業者など多くの人が毎日出入りしています。
人だけではありません。建設機械や資材をのせたトラックを乗り入れ、荷物の積み降ろしなどの作業を繰り返しています。はっきり言って、騒音や通行の妨げになるなど近所に少なからず迷惑を掛けているのが実情です。
そんなことも知らずに、近所の評判を聞けば業者の良し悪しがわかるとは、あまりにも単純な発想です。
5. 業者選びの常識5つの間違い その④ リフォームの実績を見れば分る
「実際にリフォームした事例を見せてもらいましょう。見ればすぐ分ります」
さきほどの『会社を訪問して近所の評判を聞けば分る』と同じようにお客様に積極的な行動を求めるものですが、実際に実現させることはなかなか難しいことです。
自分のリフォームの参考とするために、実際の事例を見てみたいと思う方もいるでしょう。でも、業者の過去の実績を見に行くことは、その業者だけでなくお客様にも何らかの手間を掛けることになります。
そんなことまでしたら、後で断りたくても断りにくくなってしまうと心配される方もいます。そんな人間の気持ちの微妙な部分を理解していれば、事例の見学がそもそも簡単ではないことが分ると思います。
それでも見たいと頑張って行く方もいるでしょう。でも、あなたの家とその家は、築年数、構造、間取り、年齢、家族構成、リフォームの要望などほとんどの条件が違っているはずです。そんな家を見せてもらっても、あなたのリフォームの参考になるかどうかはかなり疑問と言わざるを得ません。ましてや、事例を見て業者の良し悪しまで判断することは、非常に難しいことです。
6. 業者選びの常識5つの間違い その⑤ 建築士に相談すれば安心
リフォーム業者も外壁、内装、水まわりの設備など、それぞれ専門とする工事が違います。同じようにひと口に建築士と言っても、そのタイプはいろいろです。個人用の住宅を得意にする人、マンションやビルを得意にする人、建物の設計ではなく構造計算のみを専門にする人などさまざまです。
木造、鉄骨、鉄筋コンクリート造など建物の構造の違いによっても、建築士の得意とする分野が違います。また、建築士のなかには新築を主に扱い、リフォームなど増改築の経験をあまり持たない建築士もいます。
建築士のすべてが住宅のことが詳しいとは限らないなかで、「建築士に相談すれば安心」というのは、建築士にまかせればすべてが解決するような誤解を与えてしまう乱暴な言い方です。どんな建築士に相談すれば間違いないのか、何を基準に選ぶのか、それが大きな問題ですが、素人のお客様が判断することは大変難しいことです。
7.業界の常識の盲点
いかかでしたか。以上が業者選びの常識・5つの間違いです。一般社会には、どんなことにも『常識』と考えられていることがあります。
「そんなこと当たり前のことじゃないか」
「誰でも知っているよ」
特に何の疑いを持つこともなく、正しいと信じられていることです。でも、よく調べてみるとこれまで常識と思われていることが、実際は事実と異なり、間違っていることも多いのです。
「じゃ、業者選びの常識は誰が作ったの」と疑問が湧いてくると思います。業者の選び方など建設業界の常識は、建築士や企業などの建築関係者が作ったものですから、どうしても自らの都合に勝手に合わせてしまうところが出てくるのです。
ですから、業界が作った常識が常に正しいとは限らないわけです。業界の常識を何の疑いも持たず鵜呑みにして行動すると、失敗する可能性が高くなりますので注意が必要です。これまで見てきた業者選びの常識5つの間違いはその典型と言えるでしょう。