・失敗しない住宅リフォームのコツ
・悪質業者から身を守る方法
・間違いだらけのリフォーム業者選び
・知っておきたいバリアフリー改修
1.急増する訪販リフォームのトラブル
『巧妙なだましの技』、『ずさんな工事で高額報酬』、『被害に気付かぬ高齢者』
これは、ある地方新聞に掲載された悪質リフォーム詐欺の記事の見出しです。
人当たりの良い笑顔と柔らかい物腰で、建物の無料点検をすすめる。点検に応じれば、「木材が腐っている」、「地震が起きれば倒壊する」などとウソをついて、不安をあおり、相手の意向もかまわず、必要のない工事契約を強引に結ばせる。
工事費は数百万円にのぼり、そして、工事をするのは何の資格も持たない社員。いいかげんな工事が判明しても解約に応じない。
まさに悪質リフォーム詐欺の典型のような事件です。
住宅のリフォーム工事に関するトラブル、苦情が増加し続け、大きな社会問題となっています。なかでも、訪問販売によるリフォーム工事(以下、訪販リフォームと呼ぶ)に対する苦情・相談が特に多く、全体の8割近くを占めています。
訪販リフォームの苦情・相談は、件数が多いだけでなく、深刻な内容のものが多くなっています。執拗な勧誘、強引な契約、虚偽の説明、ずさんな工事、不誠実な対応などにより被害が拡がっています。
また、工事金額の平均は200万円を超える高額となり、60歳以上の高齢者の被害が多いことが特徴となっています。高齢化社会の進展に伴い、今後認知症の高齢者も増え続けることが予想されるなかで、被害がますます拡大する恐れが指摘されています。
悪質業者にかかってしまっては、取り返しのつかないことになってしまいます。預貯金などの大切な財産を奪われてしまう経済的な損害だけでなく、後悔や自責の念にかられ精神的な痛手はいつまでも続きます。
もはや、「トラブルに巻き込まれるのは、一部の不幸な人たちのことで自分には関係ない」と他人ごとではすまされなくなってきました。では、悪質な訪販リフォーム業者から身を守るためにはどうすれば良いのでしょうか?
その方法について紹介する前に、まず国民生活センターの調査資料から、訪販リフォーム被害の実態と問題点についてみていきます。
2.訪販リフォームの苦情、相談の現状
97年度から01年度の5年間に、国民生活センターへ寄せられたリフォームに関する苦情、相談件数は37,509件(販売形態判明分)で、この5年間で倍増しています。このうち76.7%に当たる28,779件が訪販リフォームに関する苦情、相談ですから、いかに訪販リフォームに問題点が多いかがわかります。
業者と契約した当事者の年代は、60歳以上が51.7%と全体の半数を超えています。50歳代から70歳代が最も被害が多い年代ですが、80歳以上でも7.7%を占めています。悪質な訪販リフォーム業者が高齢者をターゲットにしていることがよくわかります。
退職して住宅ローンの支払もやっと終わる年代ですが、自宅も傷みが目立つようになります。建替えるかリフォームするかそれても転居か。身の回りの状況や健康状態、老後の暮し方などを考えると何を選択するのが一番ベストか難しい判断を迫られます。
また、第一線を退いたことによる虚脱感や気のゆるみ、健康への不安や体力の低下などから先行きに不安を感じていますが、経済的には余裕があることから狙われやすい年代といえます。団塊世代の大量退職が始まりましたが、今後トラブルが急増する危険性があります。
80歳以上でも8%近くの数字が出ていますが、意思表示や判断能力が低下した老人を意図的に狙った詐欺の性格が非常に強いものです。だまされたことに気付いていないケースも加えると実数はもっと多くなるはずです。
・契約当事者の年齢(28,779件中年代が分っている27,317件についての内訳)
3.リフォーム工事の箇所と内容
リフォーム工事の箇所では、屋根と外壁で全体の7割を超えています。これに床下を加えると全体の約4件に3件がこの3ケ所に集中しています。つまり、訪販リフォームの最も被害に遭いやすい箇所ですから注意が必要です。
この3ケ所に共通する点がありますが、それは人の目につきにくい場所ということです。普段から自宅の屋根にのぼり、あるいは床下に入って家の状態を確認している方はほとんどいません。そこが、訪販リフォーム業者の狙い目なのです。
家の人が知らないのをいいことに、訪販リフォームの営業担当者は一軒、一軒家の外回りを確認しながら、狙いを付ける家を物色しているのです。そして、言葉巧みに近づいて、「雨漏りで木材が腐っている」、「地震が起きれば倒壊する」などとウソをついて不安をあおり、必要のない塗装工事や耐震工事契約を強引に結ばせるというわけです。これが、訪販リフォーム業者の手口の特徴です。
国民生活センターに寄せられた苦情の内容で、最も多いのが契約内容、契約の履行、解約についてのトラブルで、全体の4分の3を占めています。具体的には、
・契約、約束が履行されない
工事予定日になっても着工されない、やり残した工事を放置
・クーリング・オフを回避された
期間内に解約を申し出たのに断られた、無視され工事を続行された
・書面が交付されない
契約書、仕様書などが交付されない
・書面の不備
契約書に日付や工事内容が記載されていない
・解約料の支払
高額な解約料を請求された
・代金の請求が不当
契約金額より高い金額を一方的に請求された
・契約能力の可否
高齢者が内容も理解しないまま契約
などとなっています。出来れば契約を結びたくない、結んだとしても内容を曖昧にしておきたい訪販業者の意図が読み取れます。
次に、販売方法についての苦情を上位からみていくと。
・勧誘の仕方が強引
契約しないと言っているのに帰らない
・点検商法
点検を装って訪問し、勧誘された
・説明が嘘だった
不用の工事を必要と言われた
・見本工事商法
安くすると言われたが、相場と比べて実際には安くなかった
・事前の説明が不十分
工事内容が違う
・次々販売
次から次へとリフォーム工事をすすめられた
・長時間勧誘
長時間にわたって勧誘され、仕方なく契約した
などとなっています。あの手この手を使って近づき、どんな手段を使ってでも、強引に契約に持ち込もうとしている姿が浮かんできます。なお、訪販リフォーム業者の代表的な手口については、次の項で紹介します。
4.訪販リフォームの問題点
ここまで、国民生活センターに寄せられた訪販リフォームの苦情、相談の内容について詳しくみてきましたが、ここから浮かび上がってくる問題点をまとめると、次のようになります。
・点検商法やモニター商法などさまざまの方法で近づき、強引に契約させ、さらに最初の工事終了後次の工事をすすめる次々販売が行われている。
・最初に訪問した日に契約を結んでいる事例が多く、充分な検討時間を取っていない。契約意思が充分固まらないまま契約しているため、トラブルになりやすい。
・クーリング・オフについて「工事施工後はできない」などのウソの説明をしたり、請求されても無視して応じない。
・工事内容に比べて工事費用が高額であることが多く、工事もいいかげんなケースが多い。
・工事代金を現金一括で支払った場合は、分割払いやクレジット契約のように未払い代金が残っている場合と比較すると、解約や減額交渉が難しい場合が多い。
などが挙げられます。トラブルや苦情に発展するのは、訪販リフォーム業者がもともと悪意を持って工事をやっている場合がほとんどです。これは、本来の意味での「悪質、悪徳業者」と呼べるものです。