• バリアフリー改修とは?

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・知っておきたいバリアフリー改修

バリアフリー改修とは?

バリアフリー改修とは?

1.バリアフリーとは?

今後、急速な高齢化の進展に伴い、寝たきりや認知症の高齢者が増え続けることが予想されています。厚生労働省の推計によると、寝たきりや認知症のお年寄りの数は、次のように急増していきます。

2000年 140万人
2010年 200万人
2025年 270万人

また、この数とは別に寝たきりや要介護の状態ではなくても、虚弱の高齢者の数が260万人になります。そして、85歳を過ぎると4人に1人が介護を必要とするようになります。介護期間は長期にわたり、また介護する側の家族の2人に1人は60歳以上で、こちらの高齢化も進んできます。

介護問題は、老後生活のもっとも大きな不安要因となっています。しかし、今後厳しい状況が予想される中でも、また身体が少しくらい不自由であってもちょっとの工夫や意識の持ち方によって、高齢期を安心して暮らすことができるようになります。

最近ではバリアフリーという言葉が広く知られるようになってきましたが、バリアフリーとはどういう意味でしょうか?

伝統的な日本の家屋は敷居があり、和室は廊下の床面より一段高いなどの特徴があります。年を取ってすり足で歩くようになってくると、ちょっとした段差でも転倒や骨折につながる危険なバリアとなってしまいます。転倒や骨折の事故から、寝たきりや死亡につながることも珍しくありません。

バリアフリーとは、身体が不自由な人でも安心して暮らせるように、家の中のバリア(障害)を取り除いてしまうということです。一般的には、「段差をなくすこと」、「手すりを付けること」のように理解されていますが、ひと口にバリアフリーと言っても、人によってそれぞれ解決方法は違い、どれ一つとして同じものはありません。

また、家の中の環境だけでなく、日本人の生活習慣や価値観もバリアのひとつになっている側面があります。たとえば、お年よりは寝起きがしやすいベッドを使いたがらず、椅子に座って過ごすのが楽であっても、たたみの上に横になるといった具合です。

ですから、高齢期を安心、安全に暮らすためには、身体の状態に応じたリフォームと同時に自身の暮らし方や考え方についても、見直しが必要となってきます。

では、次から家庭内で起きる事故を防止するために必要なバリアフリー改修について、みていきましょう。

2.事故を予防するためのバリアフリー改修

人口動態統計(厚生労働省:平成10年)によると、家庭内事故による死者の数は年間で7千人を超えています。被害は老人と子どもに集中していますが、なかでも65歳以上のお年寄りが全体の73%を占めています。

誰しも年を取るにしたがって運動能力が低下してきます。膝が上がらずすり足で歩くようになると、わずか数ミリの段差でもつまずくことがあります。特に、スリッパを履いて歩いているときに事故が多くなっています。

手すりがあればひと安心つまずいて転倒しそうになった場合に、身を守るための反射的な動作を取ることが難しくなり、筋力が低下しているうえに、骨粗鬆症も加わると骨折を起こしやすくなります。また、冬場は部屋によって温度差が大きく、暖かい部屋から浴室やトイレに行ったときなど血管が収縮して脳や心臓に発作を起こしやすくなります。

このように、年を取ると個人によって多少の違いがあっても、身体の能力や機能が低下していくことを避けることはできません。いままで当たり前のようにできていたことが難しくなってくるわけですから、家庭内での事故を防止し、安心して暮らすためには危険箇所の改修の必要性が出てきます。

統計によると、怪我をした場所の上位は階段、浴室、玄関などとなっていますので、場所別に事故を予防するための改修のポイントをみていきます。

3.廊下、階段の事故予防

廊下は、キッチン、居間、寝室、浴室、トイレなどの部屋をつないでいるため、移動がしやすいことは生活するうえで大変重要です。一方、階段はもっとも事故が多い場所ですから、特に注意が必要です。

改修のポイント
①大きな段差より小さな段差の方がうっかりしてつまずきやすいので、3ミリ以上の段差は三角形の断面
面木をあてて、段差をなくす

②できるだけ通路幅を広く取って、手すりを連続して設置する

③階段はできれば両側に手すりをつけるのがベストですが、片側にしかつけることができない場合は、降りるときの利き手側を優先する

④夜間には足元を明るくして視界を確保する

4.浴室・トイレの事故予防

浴室の事故で多いのは、足を滑らせて転倒する、温度差から来る血圧上昇で脳や心臓に発作を起こす、熱湯によるやけどなどがあります。

改修のポイント
①冬場は脱衣室、浴室に暖房を入れ、温度差を少なくする
(血圧の上昇や脳、心臓の発作の予防)

②洗い場にスノコを敷いて、転倒の予防と脱衣室との段差をなくす

③扉は引き戸、折れ戸が望ましく、ガラス面には安全フィルムを貼る
(衝突時の怪我の予防)

トイレ内でよく起きる事故は、事故が起きるときの条件や状況が浴室と共通しているところがあります。

改修のポイント
①冬場は暖房を入れ、温度差をなくす

②和式便器は、洋式に入れ替える(転倒や発作の予防)

③扉は引き戸が望ましいが、ドアが内開き(押して入る)の場合は、中で倒れてドアが開かなくなるのを避けるために、外開き(引いて入る)に変更する

5.要介護者のためのバリアフリー改修

すでにみてきたように、急速な高齢化の進展に伴い、寝たきりや認知症の高齢者が増え続けています。介護問題が、老後生活のもっとも大きな不安要因となるなかで、2000年(平成12年)から介護保険制度がスタートしました。

介護保険の被保険者は、65歳以上のお年寄り(第1号被保険者)と40歳から64歳の方(第2号被保険者、医療保険に加入し、特定疾病によって要介護状態になった方)に分かれますが、ここでは65歳以上のお年寄りを対象としたバリアフリー改修について紹介していきます。

介護や支援が必要になった場合、住所のある市・区役所、町村役場に「要介護認定」の申請をして、介護認定審査会にどの程度の介護、支援が必要かを認定してもらいます。

要介護状態区分と状態の目安

状態区分
利用限度額
状態の目安

要支援1
49,700
・食事や排泄など身の回りのことはほとんど一人でできる
・立ち上りに支えが必要なことがある

要支援2
104,000
・身の回りのことなど日常生活の一部に何らかの支援が必要

要介護1
165,800
・身の回りの世話など日常生活に部分的に介助を要する状態
・認知力、理解力などに衰えが見られる場合がある

要介護2
194,800
・食事や排泄、入浴、洗顔、衣服の着替えなど日常生活全般に軽度の介護を要する状態
・認知力、理解力などに衰えが見られ、問題行動が見られる場合がある

要介護3
267,500
・食事や排泄、入浴、洗顔、衣服の着替えなど日常生活に多くの介助が必要な、中程度の介護を要する状態
・多くは立ち上りが自分でできない。歩行が自分でできないことがある
・認知力、理解力などに低下が見られ、問題行動がいくつか見られる場合がある

要介護4
306,000
・日常生活全般にわたり全面的な介護が必要となり、介護なしには
日常生活を行うことが困難な状態で、重度の介護を要する状態
・認知力、理解力などに著しい低下が見られ、問題行動が増えてくる場合が多い

要介護5
358,300
・日常生活全般にわたり介護なしには日常生活を行うことが不可能な状態で、最重度の介護を要する状態
・意思の伝達がほとんど、または全くできない場合が多くなる

注:居宅サービスは1月の上限額が決められています。限度額内でサービスを利用した場合の負担額は1割ですが、限度額を超える場合は、全額自己負担となります。

6.介護保険で利用できる他のサービス

要介護といっても状態によってレベルが異なるので、障害の程度や進行に合わせて改修を実施します。また、住宅改修のほかにも、生活改善のために福祉用具の購入やレンタルなど介護保険で利用できるサービスがあります。

介護保険で利用できるサービス

住宅改修

・手すりの取り付け
・段差の解消
・すべりの防止及び移動を円滑にするための床または通路面の材料の変更
・引き戸などへの扉の変更
・洋式トイレなどの便器の取替え

一人原則一回のみ20万円
自己負担1割

福祉用具(購入)

・腰掛便座
・特殊尿器
・入浴補助用具
・入浴用椅子
・浴槽用手すり
・浴槽内いす
・入浴台
・簡易浴槽
・移動用リフトのつり具の部分

一人一年間に10万円
自己負担1割

福祉用具(レンタル)

・車椅子
・車椅子付属品
・特殊ベッド
・特殊ベッド付属品
・とこずれ予防用具
・体位変換器
・手すり
・スロープ
・歩行器
・歩行補助杖
・徘徊感知器
・移動用リフト
・段差解消リフト
・垂直移動のみの入浴リフト
・立ち上り補助いす
・入浴リフト
・スライディングボードマット
・六輪歩行器

介護費用に含まれる、
自己負担1割

要介護認定を受ける状態の方が、自宅で生活を続けていくためには、住宅の改修だけでなく杖、車椅子、ベッドなどの福祉用具は、身体の状態に合ったものを使うことが必要になります。そうすることで、不自由な部分をカバーして、安全に気持ちよく生活することができます。