リノベーション
リノベーションのきっかけ
- お爺さんの足腰が急に弱ってきて、二階への昇り降りが難しくなってきた
- 一階だけで生活出来るように、水回り設備をコンパクトにまとめて欲しい
リノベーション前の状態
正確な築年数はわかりませんが、鉄骨の躯体と壁はブロックを積んで仕上げた二階建の建物です。
アーケード形式の商店街の大通りに面していています。以前は店舗として人に貸していましたが5年ほど前に閉店し、そのままとなっていました。いろいろな事情で老夫婦が二階に移って来ましたが、キッチンもお風呂もなくとても不便な生活に困っていました。そのうちお爺さんの足腰が弱り階段の昇降にも支障が出始めたことで、一階だけで生活出来るよう旧店舗部分をリノベーションすることになりました。
工事の流れ
一階は以前店舗だったこともあって造作物があまり無くオープンに近い状態でした。解体工事は天井と壁が中心となります。
ただショーウインドーやミラー貼りの壁などガラス類が多く残っていて分別に手間が掛かります。
解体が終わると奥まで見通すことが出来ます。間口が3.5m、奥行きが12mですからかなりの狭小スペースです。
しかも奥の間口は2.5mと更に短く11坪弱の面積です。この広さの中に玄関や水回りを始め、生活するのに必要な全ての要素を取り込みます。
工事はまず玄関とユニットバスを据える二ケ所にコンクリ―ト基礎を作るところから始まります。
以前からコンクリ―トだった床にドリルで穴を空けて鉄筋を差し入れ、新しい基礎と一体化させて強度をアップさせます。
ブロックを積み上げた北側壁面の二ケ所に明り取りを兼ねたサッシ窓を取り付けます。
ブロックは縦20㎝、横40㎝の大きさです。継ぎ目の目地にある鉄筋を切断しながら、必要なサイズの開口部を作ります。
内部の造作工事が始まりました。土台や大引にはいつのようにヒノキ材を使っています。
金属製の束を床に固定し、その上に大引を据え付けます。工事の手順や使用する材料に建物の大小の違いはなく同じ基準で施工します
大引と大引の間には床下断熱材スタイロフォームを入れ、断熱効果を向上させています。
28ミリ厚の構造用合板を張ると床の下地が完成しますが、今回はクッションフロア仕上げとなるため更に5.5ミリの合板を重ね貼りしています。
床が出来上がると壁の下地を造作していきます。作業場の面積が限られているため、長さが4mある角材の取り廻しにも最善の注意を払います。
店舗の時の天井は高くなく、床を上げた分高さの確保が心配でしたが、解体してみるとまだ充分余裕があります。
窓枠の下地が出来るとサッシを取り付け、ガラス戸を入れます。玄関の引き違い戸も無事収まり、スムースに動くことを確認しました。
玄関側はすでに透湿シートを張って外壁材を止める外部胴縁の取り付けが終っています。
内部の作業も順調に進んでいます。天井の下地がすでに完成し、玄関側の壁には断熱材を入れています。
玄関と住居部分との仕切りとなるのは木製の片引き戸です。上り框からレールを無くすため、片引き戸は上吊り型を選択しました。
すでにキッチン本体とユニットバスの据え付けが完了しています。限られたスペースの中でも、施主様のご要望を叶えるためユニットバスは外せません。
壁が左奥にいくほど狭くなっている関係で、キッチンとユニットが平行に並ぶように壁を一部出しています。
ずっと前から雨漏りが続いているとのことでしたが、一番上の笠木の劣化が相当進んでいることを確認しました。
既設のカラー鋼板の上に胴縁を取り付け、新しい外壁材の下地を作ります。この作業が大工さんの最後の仕事となります。
外壁材はガルバリウム鋼板を使用しています。言うまでもなく最もよく利用されている材料です。
ガルバ鋼板のいくつかの種類の中で北側外壁には角波タイプ。玄関側はコストは若干アップしますが、質感の高いKスパンタイプを選んでいます。
以前は貸し店舗だった一階部分を施主様夫妻が普段暮らしの出来る住居に作り変えたリノベーション工事。40日間を経て竣工を迎えました。
店舗だった面影はどこにもなくごく普通の居宅の玄関の風情となっています。カラーコンクリートの部分がアーケードの通路部分です。
この商店街はかつて大変な賑わいを見せていた地域のシンボルのような場所でした。ただここも例外ではなく今では多くがシャッターを閉めたままとなっています。
屋内から玄関方向を眺めたところです。玄関から入って右側に下足箱を備えています。
部屋に入ってからキッチンまでの限られたスペースですが、この場所が施主様夫妻が一番長く時間を過ごされる場所となります。
キッチンは必要最小限のサイズと機能があれば良いとのご要望を踏まえ、横幅を190㎝としましたが、充分な調理スペースと収納を確保しています。
また、おばちゃんが使い慣れているということで最初にリクエストがあったIHコンロを採用しています。
キッチンの横にユニットバスを配置しましたが、ご覧の通り浴室入り口と壁の間の通路が狭くなっています。
この通路幅の確保が一番のポイントでしたが、最終的な有効幅は62㎝となりました。これだけあれば充分と施主主からお墨付きを頂きました。
タカラスタンダード製ですから、壁面のパネルもすべてホーローとなっていて、手入れや掃除が簡単になります。
使い勝手の良さを考えて片引き戸を採用しました。浴室サイズは0.75坪と少し手狭ですが、通路幅との関係でこれが限界となっています。
浴室の左側に洗面化粧台と洗濯機の排水パンを並べています。以前は洗濯機を屋外に置いていましたが、雨が降ってもそのままの状態でした。
水回りの設備を一カ所にまとめましたので、使い勝手が良くなって快適性がグンと向上しました。
おばちゃんはここまで大きく変わるとは予想していなかったようです。「本当に良くしてもらってありがたい」と何度も感謝の言葉を頂きました。
工事期間中は仮設トイレを手配していましたが、お爺さんから使いにくいとダメ出しを受けましたので、工程を変更して早めにトイレを入れ替えました。
ご家族の方はとても心配していたらしく、予定より早くトイレが完成したことをとても喜ばれていました。
外壁も張り替えが完了しています。またポリカーボネート屋根付きの差し掛けを取り付けました。これからは天気予報を気にすることなく洗濯物干しが出来るようになりました。
出入り用の門扉も木製からアルミ製に新調し、すべての工事が完了しました。